2012年4月24日火曜日

Step910



1.認知障害の程度の評 価
   HDS-Rなどの簡便な認知機能検査(表4、参照1、参照2)によ り、認知障害(中核症状)の内容と程度の概略を知ることができる。これらの検査はまた、間隔 をあけて繰り返し行うことにより、経過による認知障害の進行(場合によっては改善)を評価するのにも適している。

2.日常生活における行 動能 力の評価
  痴呆の重症度は、質問検査によって評価される認知機能だけでなく、日常生活における行動能力を考慮して判定する必要がある。このような評価法として Clinical Dementia Rating (CDR)があり、記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家庭状況および趣味・関心、介護状況の7つの側 面から、5段階の評価を行う(表6)。 CDRの総合判定の方法を(参照8)に示す。

3.周辺症状の評価
  痴呆患者の介護において、いかに"手がかかるか"を左右するのは、中核症状の程度よりもむしろ、感情や意欲の障害、幻覚・妄想などの精神症状や行動障害、 すなわち周辺症状である。介護保険の判定に際しても、周辺症状(問題行動)が重視されるので、主な周辺症状の有無と程度を確認しておくと役に立つ。

    表6  Clinical  Dementia  Rating (CDR)      参照8  CDRの判定方法
 
 
 
 

ステップ10 : 痴呆の病型と重症度に合わせて、
                    治療方針や対策を決定する


完璧主義と英才


   痴呆患者の病型と痴呆の臨床的重症度に対応して、適切な治療を行うことが大切である。
1.アルツハイマー型痴呆の中核症状に対する薬物療法
    わが国で認可されているアルツハイマー型痴呆治療薬は、中枢性アセチルコリン・エステラーゼ阻害薬である塩酸ドネペジル(アリセプトR ※R は丸付 )だけである。塩酸ドネペジルを用いる際のポイントは以下のとおりである。

@ 適応は軽度および中等度のアルツハイマー型痴呆である。しかし重症例で有効であったという報告もある。
A 最初の1、2週間は3mg錠を1錠、1日1回(通常は朝食後)経口投与、それ以降は5mg錠を1錠、1日1回経口投与する。この投与スケジュールは初期の 消化器系副作用(嘔気、嘔吐、下痢など)を防止するためであり、5mgが有効量である。細粒もある。
B 認知機能や日常生活能力がある程度改善するが無効例もある。改善が認められても、1年以内にもとのレベルに戻り、以後は徐々に悪化する。
C 投与中止により急激に悪化する場合があり、また6週間中断すると再投与しても中断前の状態に戻らないといわれているので、中止する際は慎重に行う。

2.血管性痴呆に対する薬物療法

   脳血管性痴呆の中核症状に直接有効な治療薬はない。現時点では、脳梗塞の再発を予防することが最も大切である。また、脳循環代謝を改善することにより、自 発性の低下や認知能力障害の改善に有効な治療薬がいくつか認可されている。


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@ 脳梗塞の予防では、高血圧、高脂血症、糖尿病などの危険因子のコントロールが大切であり、肥満や喫煙を避け、脱水にならないように注意することが肝要であ る。
A 脳梗塞の再発予防は臨床病型により異なる。アテローム血栓性脳梗塞では、抗血小板薬が有効であり、アスピリンや塩酸チクロピジン(パナルジンR  ※Rは丸付)を投与 する。心原性脳塞栓症では、非弁膜性心房細動を合併していることが多く、抗凝固薬が有効であり、ワルファリン(ワーファリンR  ※Rは丸付)をINR2.0から3.0 を目標に投与量を設定する。ラクナ梗塞では、シロスタゾール(プレタールR  ※Rは丸付)が我が国の臨床治験で有効性が示されている。
B 脳循環代謝薬に関しては、近年再評価が行われ、脳梗塞後遺症の諸症状に対して保険適応を有する薬剤は、現時点では、ニセルゴリン、イブジラスト、酒石酸イ フェンプロジルのみである。
C 脳梗塞後のうつ状態に対しては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を含む抗うつ薬の投与が推奨される。

3.周辺症状に対する薬物療法
  周辺症状に対する治療は非薬物的な介入が第一であるが、明らかなうつ状態やせん妄がみられるときや、周辺症状による患者や介護者のQOLの障害が大きいと きなどは、薬物療法の対象となる。このような場合には、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬などを用いることになるが、これらの薬物自体により認知機能が低下 することもあるので、原則として専門医にまかせるべきであろう。
 

B. 痴呆性高齢者に対する精神療法・心理社会療法


何が実数のdivisonの例です。

1.行動を介した精 神療法・心理社会療法
    痴呆性高齢者の能力にあった環境を整備し、残存能力を十分に引き出す行動療法

2.感情・感覚を介した精神療法・心理社会療法

@ 対象者の過去を思い出させる等の方法によって感情を刺激する治療法
回想療法(reminiscence therapy)、確認療法(validation therapy)

A 感情を介する治療法
支持的精神療法、感覚統合(sensory integration)、疑似刺激直面療法(simulated presence therapy)

3.認識を介した精 神療法・心理社会療法
    現実を把握させる(reality orientation)、技術訓練(skill training)

4.刺激を介した精神療法・心理社会療法

     グループ活動、手芸・ゲーム・ペットなどのレクリエーション、音楽・ダンス・絵画といった芸術を介する刺激による治療法
     デイケア、デイサービス、音楽療法、ペット療法など

     上記の治療法と並行して介護者への支援・共感・教育は不可欠である。
 

C. 痴呆性高齢者の介護支援                (事業者一覧は、資料編を参照)

1.在宅サービス

@ 訪問系サービス
    訪問診察、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリテーション、訪問薬剤指導、訪問入浴、訪問栄養指導、訪問歯科衛生指導など

A 通所系サービス
   a) 介護老人福祉施設における通所介護(デイサービス)
   b) 介護老人保健施設における通所リハビリテーション
   c) 診療所、病院などにおける通所リハビリテーション
   d) その他の宅老所におけるデイサービス
   e) 短期入所サービス(ショートステイ)

 ショートステイは介護保険施設で主に行なわれている。それぞれの施設の特性があるので、 担当の介護支援専門員と連携の上で選択することが大切であ る。


2.入院・入所系 サービス
@ 病院
a) 一般病棟
      急性疾患の治療以外では痴呆性高齢者には不向き

b) 老人性痴呆疾患治療病棟
      医療保険対象の精神科病棟。激しい精神症状や異常行動への対応を行う。

c) 介護療養型医療施設
     急性期を過ぎているが、なお医療と療養を必要とする場合に入院する。

(A )療養型病床群 :  
    医療保険と介護保険適応の2種類がある。受け入れ可能な痴呆の重症度は、病院側の体制による。
(B) 老人性痴呆疾患療養病棟 
    医療保険と介護保険適応の2種類がある。精神科を標榜し、精神科医が常勤している。  激しい精神症状や異常行動は落ち着いたが、療養がさらに必要な場合が対象で比較的 長期間の入院が可能である。


A 施設

a) 介護老人保健施設
    症状が安定しているが、リハビリテーションや医療・介護サービスを受けて家庭復帰するための準備を行なう中間施設。介護保険対象。痴呆専門棟を有していれ ば、ある程度の痴呆に伴う精神症状や異常行動に対応可能である。

b) 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
    常に介護が必要であるが、在宅で適切な介護を受けることが困難な高齢者の生活の場としての施設。医療施設ではないので、痴呆に伴う精神症状や異常行動の管 理は困難である。


c) 特定施設入所者生活介護(介護型有料老人ホーム)
    介護老人福祉施設の民間版。入所要件はさまざまなので問い合わせが必要である。なお、県内には、このサービスを提供する施設は、現在のところない。

 d) 痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)

    5人以上9人以下程度の少人数の痴呆性高齢者を単位とした共同居住形態。要介護認定を受けた人の介護の部分は在宅と同様の扱いで介護保険の、医療の部分は 医療保険の適応である。多くの場合は、共同生活に耐え得る程度の痴呆性高齢者が対象である。

e) ケアハウス
    見守りが必要な高齢者の食事付きアパートであり、公費または介護保険より給付されます。多くの場合、痴呆に伴う精神症状や異常行動には対応できない。

痴呆性高齢者を入院または入所で治療・介護する場合は、上述した各施設の特色をよく検 討することが必要である。多くの場合、施設に余裕 はなく、入院や入所するにあたっては、相当期間待機する必要がある。
 



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