2012年5月9日水曜日

セルフ・ハンディキャッピング生起動因と完全主義傾向


セルフ・ハンディキャッピング生起動因と完全主義傾向

セルフ・ハンディキャッピング生起動因と完全主義傾向

場面想定法による志望進路への態度

丸本 奈央

(関西大学大学院博士課程前期課程)

                                                                                                                                                        


距離学習失語症コース

目的 完全主義傾向の高い者は、セルフ・ハンディキャッピング(以下SH)をとる傾向が高いとされている(Hobden,K & Pliter,P, 1995)。この2概念には、ポジティブとネガティブの両側面があり、例えば、自尊心との関係でそれらの側面が特徴づけられている(Ashby,J.S & Rice,K.G,2002 ; 丸本・高木,2003)SHと完全主義との関係は、「遅延者(procrastinator)」においてみられるとされている(Ferrari,J. R, 1992)が、その関係はどのようものであるのだろうか。

本研究では、SHに「時間的な感覚」に関する内容を考慮し、大学生の達成困難な志望進路という場面において、完全主義傾向とSH生起動因との関係を自尊心の高群と低群の間で比較検討することを目的とする。


コンピュータ態度不安インド

方法 質問紙調査。調査対象者:大学生270(男性138名,女性132)、平均年齢20.81(SD=2.34)調査内容:@場面想定法によるSH行動に関する尺度23項目6件法。場面:これから第一志望の進路に関与する試験を一ヶ月後に控えて受験勉強をしている場面を想定。この時期に限り、特に感じたり、考えたり、行動したりすることをイメージして、回答させた。測定項目:@SHS23項目(小口・沼崎,1990)を基に選出し、さらに予備調査で得られたものなどを加え、ワーディングしたもの、A自己志向的完全主義尺度(桜井・大谷,1997)20項目6件法、BRosenberg自尊感情尺度(山本真理子ほか,1982)10項目5件法を使用。


ノバック、ジョセフは学ぶ方法を学ぶ

結果と考察 自尊感情尺度の因子分析(主因子法・プロマックス回転)の結果、共通性の低い第8項目を除いた全9項目の合計得点の平均値(28)で高群と低群に分けた(t(269)20.59,p<.05)。次に、SH生起動因に関する尺度と自己志向的完全主義尺度をそれぞれ因子分析(主因子法・プロマックス回転)し、その結果、SHでは「情緒的不統制感」「時間的感覚の低さ」「完全性の追求」「課題への自己関与低減」「刹那主義傾向」の5因子と完全主義は「完全欲求」「ミスの過大視」「個人志向的高目標」「自己不信」の4因子が抽出された。それぞれ抽出された因子の合成得点を用いて、自尊心の高群と低群別にモデルを作成し、他集団で構造方程式モデルによるパス解析を行った結果、最も適合度の高かったモデルをFigure1,2に示した。まず、高群・低群の完全主義で4因子の合成得点間の関係が異なる可能性が予測される。SHの構造は「完全追求」からは、「時間的感覚の低さ」「刹那主義傾向」へ負のパスが有意である点(p<.001,低群:パス係数=-.18,p<.
05)は、課題への準備に完全であることを求めないと計画性のある時間の使い方ができず、今さえ良ければいいという刹那的な思考から生じる。この過程は沼崎・小口(1990)の「やらない」因子を示唆した。「ミスの過大視」「自己不信」から「情緒的不統制感」へのパスは、自分のミスが気になり、また自己への行動に不信感をもつことから情緒が統制できないという「やれない」因子(沼崎・小口,1990)を示唆した。Fig1自尊心低群]:「自己不信」から「時間的感覚の低さ」へのパス(p<.001)は、自己への行動に不信感をもつことから時間的な計画性的行動がとれない「やれない」SHを示唆した。「完全欲求」から「時間的感覚の低さ」への負のパス(p<.05)、「情緒的不統制感」から「時間的感覚の低さ」へのパス(p<.001)が有意であった。これは、完全性が計画的で時間的な感覚を低下させないこと、つまり、完全を求めることで時間的なことを把握した計画性のある課題への準備を行えることを予測している。反対に、情緒が統制できないと感じると時間的な感覚が低下し、計画的な準備が困難になることも示唆された。後者は、やりたくてもできないという獲得的SH生起へ繋がることが予測される。[Fig2自尊心高群]「完全欲求」から「刹那主義傾向」へ、続いて「時間的感覚の低さ」へのパス(p<.
001)、「刹那主義傾向」から「課題への自己関与低減」へのパス(p<.001)が有意であった。楽しくないことはやらないという刹那的、自己中心的な考え方が計画性のある時間的な感覚を欠如させ、課題への自己関与を低下させることを示唆する。これは、SH方略の敢えてやらない、努力低減を予測すると考えられる。以上の点から、自尊心高群と低群により、完全主義傾向との関係から、SH方略の生起動因が異なる可能性が予測された。

 

 



These are our most popular posts:

スポーツの場面における達成目標志向性と完全主義の関係 HB08E100 ...

達成目標志向性と同様に、完全主義も達成場面において個人の思考及び行動に影響を 及ぼす (Dunn, Dunn, Syrotuik, 2002)。完全主義と達成目標志向性の関係を調査 した研究は存在するが(Araki, Toji, Nishigaki, 2009 ; Dunn, Dunn, Syrotuik)、 ... read more

完璧主義?不動産購入応援サイト(不動産調査,住宅購入相談,住宅 ...

2006年2月17日 ... 完璧主義?:住まいを探すにあたって、あれこれといろいろな希望や要望は、どなたにも あると思います。ひとつひとつの希望や要望は、特別世間知らずというわけでもなく、誰 でも思う一般的な. read more

心理データ解析第5回(2)

そこで,過去1カ月の失敗経験と完全主義傾向,抑うつ傾向からなる質問紙調査を24名 に実施した。失敗経験の数によって,少群(1),中群(2),多群(3)に被調査者を分類し ,完全主義傾向の平均値によって,低群(1),高群(2)に分類した。各群の抑うつ傾向 ... read more

ちゃんとめ! 【調査】「彼氏が神経質」「彼氏が完璧主義者」…破局し ...

2012年4月7日 ... そこで今回は破局しやすい カップルにはどんな特徴があるのか調査してみました。 1位: 金銭感覚に差がある 2位:愛情に温度差がある 3位:彼氏が神経質 4位:互いに自分に しか興味がない 5位:彼氏が完璧主義者 気になる6位以降はこちら ... read more

0 件のコメント:

コメントを投稿